コラム
海鳥とウミガメの楽園をきれいに!小笠原諸島・聟島でのビーチクリーン活動
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すみだ水族館では、2023年から小笠原諸島でビーチクリーン活動を行っています。
これまで3回にわたり父島で活動してきましたが、現地の方々から話を伺うなかで、無人島にも多くの漂着ごみがあり、回収が難しい状況にあることを知りました。
そこで今回は、小笠原諸島最北端に位置する無人島「聟島(むこじま)」で実施したビーチクリーン活動をご紹介します。
聟島はどんな島?
聟島は小笠原村に属する面積約2.57平方キロメートルの無人島です。1944年頃まで人が暮らしていましたが、現在は人の定住はなく、ウミガメの産卵地や海鳥の繁殖地として豊かな自然が保たれ、多くの野生生物が生息しています。貴重な生態系が残されているため、浜以外は誰でも自由に立ち入れる場所ではありません。
一方で、この島は大量の海洋ごみが漂着する場所でもあります。海を漂うごみが潮流や風によって運ばれ、誰も住んでいない島にも次々と流れ着くのです。東京都の調査や現地の漁業者やレンジャーからも、その情報が寄せられています。
無人島での清掃活動は簡単ではない
「ごみがあるなら拾えばいい」と思われるかもしれません。しかし、聟島での清掃活動はそう簡単ではありません。
聟島は父島から北へ約70キロメートル離れており、船で片道約4時間かかります。定期航路や港がないため、大型船が直接接岸することもできません。さらに宿泊施設もないため、活動時には許可を得て宿泊します。また、移動や装備、ごみの運搬・処分にも多くの費用と労力がかかります。こうした入念な準備を経て、ようやく海浜清掃を実施することができるのです。
加えて、生態系への影響を防ぐため、入島前には厳しい外来種対策も行います。荷物や衣服に付着した植物の種などを一つひとつ取り除き、持ち込む物品は生物の紛れ込みを防ぐために冷凍処理を実施。履物の泥を落とし、消毒も行ったうえで島へ向かいます。
いよいよ聟島へ
こうした多くの準備を経て迎えた活動当日。
当日は風も波も穏やかで、目の前には美しい「ボニンブルー」の海が広がっていました。私自身、冬の小笠原で荒れた海を見る機会が多かったため、ほっとひと安心です。
実は、聟島へ行けるかどうかは天候に大きく左右されます。海況が悪ければ船を出すことができません。そのため、聟島での海浜清掃は実施そのものの難易度が非常に高い活動です。
父島を出航して約3時間半。小笠原の島々と青い海を眺めながら進み、ついに聟島へ到着しました。
しかし、上陸も簡単ではありません。島には港がないため、大型船からゴムボートで人や荷物を何度も往復して運び込みます。上陸するだけでも一苦労でした。
目の前に広がった大量の漂着ごみ
ようやく到着した浜辺で目に飛び込んできたのは、美しい景色とは対照的な大量の漂着ごみでした。
無人島とは思えないほど多くのごみが散乱しており、海洋ごみ問題の深刻さを改めて実感しました。気持ちを切り替えて、さっそく清掃活動を始めます。
当日は炎天下。日陰はまったくなく、熱中症に気をつけながらの作業です。島から簡単に離脱できる環境ではないため、こまめな水分補給と休憩を取りながら、ごみを回収していきました。
やがて夕方を迎え、この日の作業は終了です。活動は翌日も続くため、浜辺にテントを張って一泊しました。
夜になると人工の明かりは一切なく、聞こえるのは波音と海鳥たちの鳴き声だけ。慣れない環境で何度か目を覚ましましたが、満天の星空は昼間の疲れを忘れさせてくれる美しさでした。
集まったごみと清掃の成果
翌朝は涼しい風が吹き、前日の暑さが嘘のような心地よい目覚めとなりました。朝食後は引き続き海岸の清掃を進めながら、前日に集めたごみを船へ運び出しました。
回収したごみで特に多かったのはペットボトルです。また、サンダルや靴底などの履物も数多く見つかりました。缶や食器、ペンなどもありましたが数はそれほど多くありません。なかにはバイクのシートといった珍しい漂着物もありました。
集めたごみの搬出も大変な作業です。大型船を浜辺につけることができないため、ゴムボートで何度も往復しながら運搬します。もちろん、すべて人力です。
こうした作業の末、13立方メートル分もの漂着ごみを回収することができました。
ごみに覆われていた浜辺が本来の姿を取り戻していくようすを見たときは、大きな達成感がありました。
聟島で出会ったいきものたち
今回の活動では、多くのいきものやその痕跡にも出会いました。写真は左上から、アオウミガメの移動跡、オカヤドカリ、オオイワガニ、ヤセタマカエルウオ、海を泳ぐアオウミガメ、カツオドリのペアです。
砂浜にはウミガメの上陸跡があり、海ではアオウミガメがゆったりと泳いでいました。岩場の波打ち際にはオオイワガニやヤセタマカエルウオ、崖の上にはカツオドリのペアの姿も見られました。夜の浜辺ではオカヤドカリも活動しており、聟島が豊かな自然に支えられた島であることを実感しました。
この活動を通して
今回の活動で改めて感じたのは、無人島で清掃活動を行うことの難しさです。準備や移動には多くの時間と労力が必要で、活動そのものも天候に大きく左右されます。そして活動当日は炎天下のなかでの体力勝負でした。
一方で、回収したごみのほとんどは島で出たごみではありません。海を漂い、遠くから流れ着いたごみが、海鳥やウミガメたちをはじめとするいきものたちの暮らしに影響を与えています。
海洋ごみ問題は遠い海の出来事ではなく、私たちの日々の暮らしとつながっています。回収や運搬には多くの時間と労力が必要ですが、さまざまな立場の人々が力を合わせることで、一歩ずつ前へ進むことができます。
すみだ水族館は、これからも小笠原村をはじめとする関係機関のみなさまと連携しながら、小笠原諸島の豊かな自然といきものたちを未来へつなぐため、保全活動と普及啓発に取り組んでまいります。
今回のビーチクリーン活動にご協力いただいたみなさま
- 小笠原村 産業観光課 課長補佐 小野寺将嘉 様
- 小笠原村 環境課 自然環境係長 井上直美 様
- 東京都 小笠原支庁 土木課 道路河川担当 河合力輝 様
- 環境省 関東環境局 小笠原自然保護官事務所 世界自然遺産調整専門官 本田康介 様
- 国土交通省 小笠原総合事務所 国有林課 課長 齊藤洋介 様
- NPO法人 小笠原海洋島研究会 環境保全部 南出准 様
みなさまからのコメント
今回の聟島での海ごみ回収活動を通じて、普段は人目につきにくい無人島にも多くの漂着ごみが流れ着き、貴重な生態系に影響を及ぼしている現状を改めて実感しました。
一方で、アクセスの難しさやごみの運搬・処理にかかる大きな負担など、回収活動にはさまざまな課題があることも再認識しました。
こうした課題の解決は容易ではありませんが、行政、地域、企業、NPOなど多様な主体が連携しながら活動を積み重ねていくことには大きな意義があります。
きれいになった浜辺にも、残念ながら新たなごみは流れ着きます。それでも、海ごみのない海を目指し、一人ひとりの行動と協力の輪を広げながら、小笠原の豊かな自然と生きものたちを未来につないでいきたいと思います。









