コラム

2021.10.21

アオウミガメの赤ちゃん、ふるさと小笠原の海へ! 現地レポート

  • 飼育

すみだ水族館では、2012年の開業時より小笠原村と提携し、アオウミガメの保全活動の一環として赤ちゃんを約1年間お預かりし、大切に育てた後に生まれ故郷の海へ還す活動を行っています。
そして2021年もお預かりしたアオウミガメが、小笠原の海へと還っていきました。そのようすを飼育スタッフと一緒に見守ってきましたのでレポートします!


<海へ還っていくコペペ>


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出会ったのは約1年前

2020年9月8日、小笠原海洋センターでアオウミガメの赤ちゃん2頭に初対面。2020年7月24日生まれの体はわずか手のひらサイズで、小さな前肢(まえあし)をぺちぺちと一生懸命に動かして元気いっぱい。赤ちゃん2頭は飼育スタッフと一緒にフェリーに乗り、遠路遥々すみだ水族館へとやってきました。‌


<小笠原海洋センターでアオウミガメの赤ちゃんたちに初対面>


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2頭は小笠原にちなんだ名前として、父島にあるジョンビーチ、コペペ海岸から、それぞれ「ジョン」「コペペ」と名付けられました。すみだ水族館で過ごした約1年間で、多くのみなさまに見守られすくすくと成長。お預かりした当初約9cmだった甲長は約23cmにまで大きくなりました。‌

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いざ、ふるさと小笠原へ!

2頭がすみだ水族館にやってきて約1年間が過ぎた8月末に小笠原行きを予定していましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により訪島を一度延期。そして2021年10月3日、ついにコペペをふるさと小笠原の海まで送り届ける日がやってきました。‌
(ジョンは右上腕骨の骨折で治療中のため、完治し次第、飼育スタッフが小笠原の海に還しにいく予定です。)

小笠原諸島に行くための交通手段は、定期船「おがさわら丸」のみ。コペペと飼育スタッフは船に乗り、片道約24時間かけて小笠原諸島父島へと向かいます。船内に水槽はないため、スタッフが交代でコペペのようすを見ながら移動します。


<定期船おがさわら丸で東京港を出港>


小笠原に到着!まずは小笠原海洋センターへ

日本国内有数のアオウミガメの産卵地である小笠原諸島。すみだ水族館は、小笠原村が所有する小笠原海洋センターでウミガメの保全活動を行っている認定NPO法人エバーラスティング・ネイチャーが主催する、ウミガメジョイントブリーディングプログラムに参加しています。‌
長旅を終えて、コペペと飼育スタッフは小笠原諸島父島に到着!コペペは、海へ還る翌日に備えて小笠原海洋センターのプールでゆっくりと過ごします。


<小笠原海洋センター>


<小笠原海洋センターのプールで泳ぐコペペ>


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さあ、いよいよ小笠原の海へ!

10月5日朝、コペペの体調チェックが済んだら、いよいよ放流を行う製氷海岸へと向かいます。コペペがちゃんと砂浜を歩けるか、海を泳いでいけるか、ドキドキと少し心配なスタッフたち。還っていく姿を海の中からも見守れるように、ウェットスーツに着替えます。‌
砂浜でそっと手を放すと、ぐんぐん波打ち際へ向かっていくコペペ。そのまま波を超え小笠原の海へ!最初は波打ち際付近を泳いでいたかと思うと、力強く羽ばたくように海中を進んでいきました。しばらく見守っていくと、あっという間に姿は見えなくなり、大きくたくましく育ってくれて嬉しい気持ちでいっぱいになりました。またいつか会えるといいね、頑張れコペペ!‌


<見送る飼育スタッフとコペペ>


<砂浜を歩き、海へ還っていくコペペ>


<大海原に旅立ったコペペ>


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2021年生まれのアオウミガメの赤ちゃんの名前決定

2021年10月2日より、今年小笠原で生まれたアオウミガメの赤ちゃんの展示を開始しました。例年は飼育スタッフが小笠原までお迎えに行きますが、今年は小笠原村立小笠原小学校5年生のみなさんが送り出してくれました。‌
小笠原小学校では、小笠原海洋センターと一緒に5年生が総合学習の授業でアオウミガメについて取り組んでいます。今回、すみだ水族館にやってきた赤ちゃんに対して「小笠原にちなんだ名前」をテーマに、5年生のみなさんに考えていただきました。その中から、小笠原諸島父島にある地名から扇浦海岸の「おうぎ」、かなめ岩の「かなめ」に決定しました。すみだ水族館のスタッフやお客さまと一緒に、今年もたくさんの人に愛されて成長する「おうぎ」と「かなめ」を一緒に見守ってもらえればいいなと思います。‌


<2021年生まれのアオウミガメの赤ちゃん。「おうぎ」と「かなめ」>


<小笠原小学校5年生による子ガメ測定のようす>


<小笠原諸島父島、扇浦海岸から見えるかなめ岩>


アオウミガメの赤ちゃんを通じて

絶滅危惧種に指定されているアオウミガメ。ウミガメ保全には様々な方法があり、一人ひとりが正しく考えることが必要です。すみだ水族館では、アオウミガメの赤ちゃんの成長を通じて、ウミガメや自然生物との向き合い方、また同じ東京都の世界自然文化遺産 小笠原を知るきっかけになるといいなと思っています。‌

小笠原諸島とすみだ水族館
2011年6月に世界自然遺産に登録された小笠原諸島は、国内最大のアオウミガメの産卵地であり、現地では保全・海へ還るための活動が行われています。『すみだ水族館』は本活動に賛同し、お客さまにアオウミガメの赤ちゃんのかわいらしい姿や希少性を伝えるため、小笠原諸島で生まれたアオウミガメの赤ちゃんをお預かりし、約1年間育てた後に生まれ故郷の海へ還す活動を行っています。‌<アオウミガメについて>‌‌
アオウミガメはIUCN(国際自然保護連合)及び環境省により絶滅危惧種としてレッドリストに登録されています。小さい頃は雑食性ですが大きくなると主に海藻や海草を食べ、甲羅の大きさが最大約100cm、体重約200kgまで成長します。毎年春から夏にかけて浜辺で産卵し、約2か月後に孵化します。一度に100個以上の卵を産みますが、1年以上生きられるものはごくわずかで、成熟するまでには約40年かかると言われています。‌

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