コラム

2021.10.27

北十間川のいきものを調査しました!

  • 飼育

北十間川は、すみだ水族館の目の前を流れている河川です。元々は江戸時代に整備された用水路の一つで、西は隅田川、東は旧中川に繋がっており、総延長は約3.24㎞に及びます。
現在は公園や船着き場などに活用されているほか、夏はマハゼ釣りを楽しむ人や川辺の散歩や、ベンチでひと休み中の方など、地域の方の憩いの場として水辺に親しむことのできる場所となっています。今回は、そんな北十間川にはどんないきものが暮らしているのか、飼育スタッフが調査しました。

北十間川の環境‌
水辺の環境に暮らすいきものたちを対象に、2021年6月から9月までの間、合計27回の調査を行いました。今回の調査場所は、流れる北十間川のうち、おしなり公園*の護岸約450m。網や釣りによって、いきものを採取し調査しました。‌
*おしなり公園…東京スカイツリータウンの目の前にあり、東武橋から京成橋までの間の水辺の公園です。園内には遊歩道や親水テラスが設置されており夜間はライトアップされます。



護岸はコンクリートで覆われていて、日当たりのよい場所には藻類が生えており、イガイ類やフジツボ類が付いている場所も。設置されている噴水装置付近にも魚が見られるなど、すき間にいきものが隠れていることもありました。金網のかごに石や土を詰めた蛇篭状(じゃかごじょう)の構造物が設置されていて、その付近にもハゼなどのいきものが暮らしていました。蛇篭の上に生えている抽水植物にはカニの姿も!様々ないきものが暮らしているようすが分かりました。‌
また、川の水を採水して水質環境の調査も実施したところ、淡水と海水が混ざり合った汽水(塩分濃度の低い水)でした。川の水は環境省が定める環境基準値の範囲内ではあるものの、透明度は低く、川底まで見える日はごくわずかでした。‌
水辺で暮らすいきものにとって水質はとても大事な条件。一見、透明度が低いと良好な環境ではないように見えますが、今回の調査で北十間川には、たくさんのいきものが暮らしていることが確認できました。‌



調査で見られたいきもの‌
今回の調査で、私たちは合計42種類のいきものを確認することができました。そのうち7種が東京都の保護上重要な野生生物に指定されている貴重な生きものでした。一方で、本来ここに暮らしているはずのない外来生物も確認できました。‌
*レッドリストとは…絶滅のおそれのある野生生物の種をリストにしたもの。世界では国際自然連合(IUCN)、日本では環境省や都道府県、NGOや学会等の団体によって作成されています。

身近な自然を守るために、わたしたちができること‌
今回の調査を通じて、すみだ水族館の身近に流れる北十間川には、実はいろいろないきものが暮らしていることが分かりました。希少種を含む多様ないきものが確認できる一方で、水面にはたくさんのゴミが浮いているなど、いきものが暮らしやすい環境とは言えません。身近な自然や、そこに暮らすいきものたちのために何ができるのか、当館の展示がみなさんの考えるきっかけになると良いなと思います。‌

すみだ水族館は、より地域に密着した存在になれるように、水族館を飛び出して、地域の小学校との交流や、身近な自然を考える活動をしていきたいと考えています。さらに、いきものへの知見の活用や環境保全にとどまらず、地元東京に根付いてきたいきものの魅力を伝えていくことで、地域の方といきものたちがもっと近づけるような架け橋になれればと思っています。‌

すみだ水族館が目指す“水族館のある暮らし”の実現のために、地域の自然環境で暮らすいきものとわたしたちの、お互いの共存も大切にしたい。水族館が暮らしの一部となり、地域のみなさんにとって公園のような場所になれるように、みなさんと一緒に歩んでいきたいと思います。‌

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