コラム

2023.12.06

アオウミガメの赤ちゃん「ボニン」と「ブルー」が水族館にやってくるまで

今年も2022年にお預かりしたアオウミガメの「はつね」と「まえきち」が海に還り、今年うまれの赤ちゃんがやってきました。「ボニン」と「ブルー」と名付けた赤ちゃんたちは、2023年9月30日に公開した新エリア「小笠原」の「オガサワラベース」ですくすく成長中です!今回は、2頭がやってくるまでと、現在のようすをレポートします。

小笠原村とのアオウミガメの取り組みについて

すみだ水族館は、2012年の開業時より東京都小笠原村と提携し、アオウミガメの保全活動に参画しています。小笠原諸島で生まれたアオウミガメの赤ちゃんをお預かりし1年間、大切に育て故郷の海へ還す活動です。一年間育てることで甲長が約8cmから約20cmに成長し、外敵に襲われにくい大きさになるだけでなく、標識をつけることができ、今後のウミガメたちの保全に役立つ情報を得られる可能性もあります。‌

※小笠原村が所有する小笠原海洋センターを運営する認定NPO法人エバーラスティング・ネイチャーが主催する、ウミガメジョイントブリーディングプログラムに参加しています。

2022年にお預かりした「はつね」と「まえきち」は故郷の海へ

毎年、アオウミガメの赤ちゃんたちは、飼育スタッフが小笠原諸島で海に還し、新たに小笠原諸島で生まれた赤ちゃんをお迎えしています。2023年9月、1年間水族館で過ごした「はつね」と「まえきち」は、「おがさわら丸」に乗って、小笠原諸島・父島へ。‌


船で小笠原諸島・父島へ

「はつね」と「まえきち」は2022年7月28日生まれ。すみだ水族館には、2022年10月にやってきました。手のひらにおさまる大きさだった2頭は、それぞれ甲長10.9cmから23.3cm(はつね)、11.2cmから21.0cm(まえきち)に成長しました。‌


すみだ水族館に来たばかりのはつねとまえきち


海に還る直前のはつね


海に還る直前のまえきち

毎年、ウミガメごとに海に還るようすはさまざま。一目散に海に向かうこともあれば、一度浜辺でこちらを振り返ることもあります。2頭の性格は、はつねは“おっとり”、まえきちは臆病な部分があります。どうなるかな・・・と現地のみなさんにも見守られる中、飼育スタッフが手を離します!‌


飼育スタッフがまえきちを見守るようす

今年は2頭とも、泳ぎは上手でしたが何度も浜辺に戻ってきて、2頭合わせて1時間ほどかけて沖に行きました。海の中でしばらく飼育スタッフも一緒に泳ぎ見届けました。‌


海の中のまえきちのようす

大海原へ泳いでいくようすは公式SNSでも配信し、視聴していた方々からたくさんの応援コメントもいただきました。海でも元気に、健やかに暮らしてね。‌


配信を見守る小笠原小学校のみなさん

新しい赤ちゃんの名前は「ボニン」&「ブルー」に

お預かりするアオウミガメの赤ちゃんの名前は、ウミガメたちが小笠原村とのつながりや小笠原諸島の自然を知るきっかけとなる架け橋でもあることから、2021年より小笠原村立小笠原小学校にてウミガメの学習を行う小学5年生のみなさんに考えていただいています。‌
テーマは、「みなさんが伝えたい小笠原の魅力」。小笠原小学校のみなさんが小笠原の広報大使になったつもりで、すみだ水族館でウミガメを見たご来館者さまに、「小笠原をもっと知りたい!」と思っていただけるような名前をリクエストしました。‌


みなさんからお名前の応募用紙を受け取る飼育スタッフ

「夕日と星がきれいなところを伝えたい」、「小笠原の植物を知ってほしい」など、素敵な魅力が詰まった名前がたくさん集まりました。その中でも今年、特に多かったのが「小笠原の美しい海の色“ボニンブルー”を伝えたい」というもの。小笠原の海は『どこまでも濃く深く透き通る青い海』で、「ボニンブルー」という愛称で親しまれています。‌

※「ボニン」は小笠原諸島がかつて「無人島(ぶにんじま)」と呼ばれていたことが由来


小笠原の海

すみだ水族館では開業時から小笠原村監修のもと、大水槽の海中の景観だけでなく、水中の色もボニンブルーを再現し、小笠原の美しい海を伝えてきました。飼育スタッフでも話し合った結果、すみだ水族館としても、新エリア「小笠原」として小笠原を発信する水族館の再出発の願いも込めて、改めて海の色「ボニンブルー」をみなさまに知っていただきたいと考え、今年の赤ちゃんは、「ボニン」と「ブルー」と名付けることにしました。‌

また昨年、「はつね」と「まえきち」の名前を名付けてくださった6年生には、お時間をいただき、教室で出前授業を実施。2頭の成長のようすやすみだ水族館について紹介しました。‌


授業のようす

授業の最後に、「はつね」と「まえきち」のお名前を考えてくださったお礼にメッセージプレートをお渡ししました。ウミガメのプレートの素材の一部は、小笠原諸島で先日回収した海洋ゴミを再利用しています。このプレートを飾っていただくことで、ウミガメが産卵する小笠原の海岸を大切に思う気持ちや、そして「広報大使」として、遠く離れたすみだ水族館を通じて、小笠原の魅力が伝えられたことを実感してもらえれば、という想いも込めました。‌


お礼のアクリルプレート

「ボニン」&「ブルー」水族館へ

今年は2023年8月6日生まれの赤ちゃん2頭をお預かりすることになりました。はつねとまえきちは見た目がよく似ていたのですが、今年は「ブルー」の顔が白っぽいなどの特徴があり、お客さまにも見分けてもらいやすそうです。‌


小笠原で赤ちゃんを観察する飼育スタッフ

水族館にやってきたボニンとブルーは、新エリア「小笠原」の「オガサワラベース」へ。‌


2頭が暮らすオガサワラベースの水槽


ボニン


ブルー

2頭の性格は、いまのところボニンは物怖じしない性格。来た時からすぐに環境になじんで、ゴハンも好き嫌いせず食べてくれています。一方、ブルーは、ちょっと気が強くて頑固。同居している魚たちに興味深々でよく追いかけたり、来たばかりは好き嫌いが多かったことも(今は何でも食べてくれます)。2頭は水槽の中で左右に分かれて暮らしています。小笠原大水槽を右手にして、(左)ボニン、(右)ブルーです。来年の秋まで成長を見守っていただけると嬉しいです。‌

小笠原村との取り組みもAQTION!のひとつ

すみだ水族館は、水族館からはじまるサステナブルな活動「AQTION!」を行っています。多彩ないきものの生活に触れ、間近に感じることができる水族館が、地球環境やいのちの大切さを思うきっかけとなり、未来を創造する子どもたちのチカラを育むことを目指しています。アオウミガメの赤ちゃんの保全活動も含め、この小笠原村との取り組みも、「AQTION!」の活動のひとつです。‌
新エリア「小笠原」ができ、一層、小笠原の魅力を伝える環境が増えたすみだ水族館で、今後もアオウミガメの赤ちゃんをはじめ、小笠原のいきものや自然環境をみなさまに知っていただくことで、AQTION!を実現していきたいと考えています。

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