コラム

2017.06.18

裏側でも大奮闘!飼育員21人が語る水族館のお仕事

  • 飼育

憧れの飼育員。その仕事といえば、いきもののお世話、水槽の清掃などが思い浮かびますね。しかし、実は他にもたくさんの仕事があるんです。今回は、すみだ水族館で働く21人に「楽しい」、「大変」、「驚き」な仕事についてアンケートしてみました。真剣な話からちょっと笑える話まで、なかなか聞くことのできない本音をそのまま掲載し、お客さまからは見えない仕事の裏側を解説します!

憧れの飼育員。その仕事といえば、いきもののお世話、水槽の清掃などが思い浮かびますね。しかし、実は他にもたくさんの仕事があるんです。今回は、すみだ水族館で働く21人に「楽しい」、「大変」、「驚き」な仕事についてアンケートしてみました。真剣な話からちょっと笑える話まで、なかなか聞くことのできない本音をそのまま掲載し、お客さまからは見えない仕事の裏側を解説します!‌
この記事を読めば求められる人物像も見えてくるかも?水族館で働くことに興味がある方は必見です!‌

0501展示プールの清掃中。ペンギンと遊びます。‌

0501バックヤードでも仕事がたくさん。‌

楽しいお仕事 ~飼育スタッフの快感~


まずは、「楽しい仕事」について聞いてみました。多かった回答は、お客さまからも見える、給餌や清掃に関する内容です。中には、ちょっとマニアックな回答も。‌
(以下、「」内はアンケートから抜粋)‌

「金魚の給餌。金魚が寄ってきてくれるのと、お客さまが喜んでくれるから。」‌

「オットセイの給餌。色々と考えながら行うのが楽しい。」‌

「『東京金魚』などの出張水族館。いろんな方と、すみだ水族館のこと、いきもののことを気軽に話し、楽しめる。」‌

「ペンギンと遊んだり、仲良くしながら、お客さまにそのペンギンのどんなところが可愛いか、個性的かを伝えています。話したお客さまに、いきものへの愛が伝わって幸せな気持ちになってもらえたら、とても嬉しいです。」‌

「大水槽の潜水給餌が楽しいです。ゴハンが欲しい子はダイバーの目をじっと見つめたり、顔の近くに来て『ちょーだい!』ってアピールしてくれるのがとてもかわいいです。」‌

「潜水掃除。コケを落とした後、プールを見ると達成感を味わえる。」‌

「大水槽の潜水清掃。汚いゴミがどんどん吸い込まれていく様子がたまらなく気持ちいい。スッキリする。」‌

「潜水掃除。コケがなくなって気持ちいい」‌

「バックヤードにいるタマカエルウオの給餌。ゴハンを食べるときにたまに勢い余って指先も食べようとしてくるが、そのときの感触が意外と気持ちいい。」‌

「ペンギン・オットセイのゴハンバケツのテープ貼り。私は細かい作業が大好きなので、黙々とテープを貼ったりしている瞬間が楽しいです。」‌

「腰に付けるゴハンバケツのテープ巻き。きれいに巻けたときの達成感を得られるからです。」‌

「クラゲの寄生虫取り。海外からやってきているクラゲは体に寄生虫をくっつけて、すみだ水族館にやってきます。他のクラゲに移らないように、水槽に入れる前にスポイトやピンセットを使って1匹ずつとっていきます。最初は苦戦しますが、だんだん慣れて上手になってきます。」‌

「アジの三枚おろし」‌

「アジのぶつ切り。内臓がキレイにとれると気持ちいい。」‌

「工作作業。没頭できる作業が好き、かつ自分で物を作るということが好きだから。」‌

「工作!いきものが過ごしやすいように水槽を改造したり、配管を組んだり、掃除道具を作ったり、網を縫ったり…意外に水族館は工作の作業が多いです。思ったとおりに作れて、いきものたちの役に立つとよし!ってなります。」‌

給餌と清掃


給餌(ゴハンをあげること)の時間は、いきものたちにゴハンを食べてもらうだけではなく、様子を観察したり、コミュニケーションを取ったりできる大切な時間でもあります。いきものたちを近くで観察できることや、その魅力をお客さまに伝え興味を持ってもらえることは飼育スタッフの仕事の醍醐味なのでしょう。‌
また、清掃が楽しいという声もありました。ペンギンプールや大水槽は、毎日、飼育スタッフたちが潜水し、水中掃除機やブラシなどを使って掃除をしています。磨いたところがきれいになっていくのは、確かに気持ちいいものですよね♪‌

0501金魚の給餌。たくさん集まってきます。‌

地味に楽しいコツコツ作業


調餌(ゴハンを準備すること)や、寄生虫取りまで、飼育スタッフたちは細かい手作業にも楽しみを見出しているようです。‌
「調餌」は、「給餌」、「掃除」とまとめて「3つのじ」と呼ばれ、飼育スタッフの基本の仕事です。調餌の中で、それぞれのいきものに合ったゴハンを作ります。冷凍庫からゴハンを出し、解凍したり、細かくさばいたり、たくさんの量を準備するためサクサクとやっていきます。‌

0501調餌室で手際よくアジをさばきます。‌

器用さを問われる工作


飼育に使う道具などは購入することもありますが、水族館によって必要なサイズや形がそれぞれ違うため、使いやすいものを自分で作ってしまうことが多いのです。水槽の配管を組んだり、清掃道具を作ったり、水槽に取り付けるフィルターをミシンを使って作ることもあります。飼育スタッフには、手先の器用さや創作力も、求められるようですね。‌

大変なお仕事 ~飼育スタッフの奮闘~


次は「大変な仕事」について聞いてみました。この質問には様々な回答がありました。‌
(以下、「」内はアンケートから抜粋)‌

「展示が維持されること。いきものの状態、展示の状態は、お客さんが楽しむ、評価をする一番の部分なので、プレッシャーを感じます。」‌

「ペンギンの繁殖。どうしたらカップルが増えるのか、場所を気に入ってくれるのか、卵を産んでくれるのか、ヒナがうまれるのか、ヒナが育つのか・・・・悩んで、考えています。2月~8月くらいまで毎日不安です。笑」‌

「新しいいきものの飼育などはアクシデントが多くプレッシャーが大きい。」‌

「いきものの体調管理。毎日いきものたちに対して健康で元気!という考えではなく、具合が悪いのに隠している前提で接する。飼育スタッフがいきものたちを健康!元気!と、意識をもち過ぎると具合が悪いのを見逃す可能性がある。」‌

「宿直。見回り時に見落としがあったらどうしようという不安とプレッシャーがある。」‌

「宿直 朝起きていきものが死んでしまっていたら、床が海になってたらと思うと不安になります。」‌

「ワークショップやそのリハーサル。緊張する。」‌

「ワークショップ等での人前で話す時間。参加者の興味を引き、飽きさせない為の話すテクニックと構成等考えることがたくさんあるから。」‌

「大水槽のマダラエイの給餌。外から見ると給餌中ずっとついてきてかわいく思えるが、実際はすごい力で押してきたり、マスクに水をいれられたり、格闘している。」‌

「潜水清掃。シロワニのプレッシャーが大変。シロワニの機嫌が悪いと早くあがりたくなる。スズメダイに怒られるのも申し訳ない。(でもシロワニが下の方でゆったり泳いでいるときは楽しく清掃できる。)」‌

「事務処理関係。文書をまとめることなどが苦手なため・・・。」‌

「事務作業。孤独を感じるときがあるから」‌

展示を作り、維持をする


来館したお客さまにいつでも楽しんでいただくために、いきものを健康に、水槽を美しく、維持することはとっても大変です。また、新しいを展示を作るのも簡単ではありません。「飼育のプロ」である飼育スタッフたちも、初めて飼育するいきものと向き合うときはゼロからのスタートなので、図鑑や文献を使って勉強したり、飼育方法を考えたり、試行錯誤をしています。‌

0501展示の準備中。水槽のレイアウトを考えます。‌

月に1~2回の不安な夜


すみだ水族館では、365日、宿直担当がいます。現在は21人の飼育スタッフがいるので、1ヶ月に1~2回の頻度で宿直がまわってきます。宿直者の任務は夜間の見回り。水槽に異常がないか、リストを持って暗い館内をライトで照らしながら回っていきます。ひとつの見落としが大きな事故に繋がってしまう可能性もあるため、宿直室で布団に入っても不安で眠れないこともあるとか。‌
(中には、水族館を独り占めできるので好き!というポジティブな意見も。)‌

0501バックヤードに宿直室があります。‌

孤独を感じる事務作業


飼育スタッフだって会社員。現場の仕事はもちろん多いですが、事務仕事もしています。物品の発注や管理、いきものたちの健康記録、資料の作成など、机に向かっている時間が意外と長いんです。限られた時間のなかで行うので、パソコンの作業にも慣れていないと苦労しそうです。‌

意外なお仕事 ~飼育員の驚き~


働き始めてから「意外」と感じた仕事についても聞いてみました。こちらは「すみだ水族館ならでは」の回答が圧倒的に多く、なんと、21人中10人が同じ答えでした。‌
(以下、「」内はアンケートから抜粋)‌

「クラス。人に伝える表現力の練習をするとは思わなかった。」‌

「表現方法を学ぶ為、プロによる「クラス」という名のレッスン」‌

「クラスがあるのは、すごいなと思います。姿勢、歩き方、表情、声の出し方など沢山のことを学び、それを仕事の中で活かすことができます。」‌

「クラス」とは?


「コミュニケーション型水族館」を目指すすみだ水族館では、飼育スタッフ全員が、なんと月に数回、バックヤードで講師から発声やダンス、歩き方などのレッスン(=クラスと呼んでいます)を受けています。このレッスンの目的は、館内で飼育作業をしながらお客さまとお話をするときに、話し方、動作、距離などがお客さまにとって自然で心地良く感じられるようにすること。この徹底ぶりに、最初はスタッフたちもみんな驚いたようです。‌


おまけ ~飼育スタッフのつぶやき~


アンケートの中に紛れ込んだ飼育スタッフのつぶやきを公開します。普段はお客さまに見せることない一面。この記事を読んだ皆さまは、すみだ水族館に来たらどうか心の中でそっと応援してあげてください。‌
(以下、「」内はアンケートから抜粋)‌

「かわいい見た目のペンギンたちですが嘴は鋭く、手を噛まれるとスパーンと切れて血も出ます。手は傷と痣だらけで、買い物してお金を渡すときなど少し気が引けます。」‌

「生傷が絶えない。痛いし大変だけど、可愛いからそんなに憂鬱ではありません。」‌

「ウエットスーツを長時間着ていると、だんだん前かがみになる、肩がこる(笑)」‌

「ウェットスーツを着たままの作業。汗っかきなので、本当に本当に大変です。なかなか慣れません…」‌

「長靴をはくとすね毛がなくなる」‌

「ペンギンのヒナの匂いがくせになる!」‌

かわいいだけではない、ペンギンとの付き合い


ペンギンのことを知るため、お客さまにペンギンたちのことを伝えるため、すみだ水族館ではペンギンに手渡しでアジをあげているのですが、ペンギンのくちばしは鋭いので、どうしても怪我をしてしまうことがあります。傷が絶えない手足は、飼育スタッフの勲章なのですね。‌

0501ペンギン1羽1羽にアジを手渡しであげます。‌

ウェットスーツ問題?


お客さまの前ではいつも格好良い姿でいるのも飼育スタッフの仕事。姿勢をシャキっと、笑顔でいるよう、頑張っています。たとえ、ウェットスーツの中が汗だくになっていようとも・・・。‌
長靴もなかなかの曲者で、とても履き心地のよい長靴なのですが、、、何といっても重いので、1日中歩き回っていると足がむくんでしまうようです。‌

飼育スタッフになるには


最後に、記事を読んで水族館の仕事に興味をもっていただいた皆さまに向けて、気になる進路の話を少しだけ。‌
すみだ水族館では、学歴は、大学・専門学校・短大卒以上で問いません。必須な資格は「潜水士」。ダイビングのライセンスは必要ありませんが、入社してからは日々の仕事で水槽に潜ることになります。「獣医師」、「学芸員」も活用できる資格です。‌

いかがでしたでしょうか。‌
楽しく華のあるように見える仕事の裏で、地味なこと、辛いこともあり、飼育スタッフたちが日々奮闘をしていることが伝わってきましたね。‌
「いきものが好き!」、「いきもののことを伝えたい!」という気持ちがあるからこそ続けることができる仕事なのではないでしょうか。‌

すみだ水族館のチケットのご購入はこちらから

公式SNSはこちら

  • YouTube
  • Facebook
  • X
  • Line